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「医療」手厚く、“囲い込み”狙う
広がる若者向け生命保険 
  東京朝刊 by 山口暢彦
大手生命保険各社が、若者向けの生命保険や医療保険商品を相次いで投入している。死亡保険金額を抑えて保険料を安くしたり、独身を念頭に死亡保障より医療保障を重視したりと、内容は多種多様だ。少子化により減少を続ける若者が保険契約の中核層になる前に、早めに囲い込んでおこうという、将来への“保険”の狙いがあるようだ。

生命保険各社からは、若者を対象にした商品が相次いで登場している(撮影・山口暢彦)

若いときから
最大手の日本生命保険が4月から発売しているのが、最低死亡保険金額を300万円に抑えた終身保険「ファーストランEX」だ。対象は15〜29歳。同社がそれまでに扱っていた終身保険商品の最低死亡保険金額ラインは500万円だったことから、大きく引き下げた印象がある。

一方で入院時の保障は手厚くし、「ケガや病気での入院は日額給付金1万円」「がんの手術は、がんの種類により1回20万円、40万円、80万円」といった特約のついたモデルプランの場合、20歳の男性ならば保険料は月1万2480円。仮に同じような特約を死亡保障金500万円の商品につけた場合に比べて、保険料は月4、5000円安くなるという。

発売から8カ月、「ほぼ当初の予想通りの契約数。年齢的にまんべんなく人気がある」と同社。若いうちに最低限の保障の契約に入ってもらうことで日本生命との“付き合い”を始めてもらい、将来的には、結婚、出産など人生のプロセスが進むとともに、保障を追加していってほしいという期待があるという。

保険料を抑える
三井生命保険は2月、3歳から29歳を対象にした医療保険「未来ひろば」を発売した。「若年層の保険へのニーズは圧倒的に死亡保障より医療保障」と同社。それを踏まえ、必須部分の死亡保険金を300万円から1000万円の間で選ぶことができるようにしたのと同時に、医療保障部分が充実しているのが特徴だ。

例えば、日帰り入院から180日の長期入院までを保障し、入院や手術による給付金の支払いがなかった場合には、5年ごとに無事故ボーナスを支給する。満期(10年)時には、30万〜100万円のお祝い金が出る。

仮に必須部分に300万円の死亡保険金をつけ、各種特約をつけた場合、20歳の男性が契約すると、1カ月あたりの保険料は6428円。死亡保険金を1000万円にした場合に比べて、約7000円安くなるという。

このほか、明治安田生命では、6〜17歳向けの積み立て終身保険「みらいとマモル」で保険料を月々1万円に固定できるプランを提供。住友生命は15〜29歳を対象にした積み立て終身保険「ライブワン DJタイプ」を発売し、保険料のうち、保障部分を増額したいときは積み立て部分を減額し、保険料全体を抑えられるようにしている。

景気回復も背景に
生保各社が若者相手の保険商品を相次いで発売している背景には主に2つの理由があるようだ。

1つは景気回復に伴い、若者が企業に正社員として採用され、収入が安定するようになったため、「保険料を払えるようになった」こと。もう1つは若者を今のうちから“囲い込んでおこう”という狙いだ。

彼らはいずれ30代、40代になり、保険契約の中核層になるが、少子化によって少なくなったパイの奪い合いになることは必至。「早めにツバをつけておこう」(生保関係者)というわけだ。

若年層の保険離れも指摘され、生保各社の危機感は増している。今後は医療や介護などのいわゆる「第三分野」に重点を置いた、若者が魅力を感じる商品展開が一層進んでいくとみられる。

29歳以下に多い未加入者
生命保険文化センターの平成15年度の調査によると、生命保険(簡易保険や共済も含む)に未加入の世帯主は、29歳以下だと約34%にのぼる。40歳代、50歳代が10%未満であることを考えると、その低さが分かる。

ファイナンシャル・プランナーの上野やすみさんは、若いころの保険選びのポイントを「特に独身だとお金を残す家族がいないので、死亡保障より医療保障を中心にしたほういい」と指摘。収入が少ないために保険に入ることを躊躇(ちゅうちょ)する若者も少なくないが、「入院時などの出費は収入や貯金が少ないからこそ痛い。保険で準備しておくべきでしょう」と、加入を勧めている。



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