「自分に似合う服が分からない」「手持ちの服を上手に組み合わせたい」…。こうした悩みを解消してくれるのが、パーソナルスタイリスト。これまでは芸能人ら一部の人に限られた存在だったが、最近は会社員や主婦にも気軽に利用する人が増えている。値ごろ感のあるサービスも増え、自分専属のスタイリストを付けることは、もはや「特権」とはいえないようだ。
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依頼者の買い物に同行する井上志津佳さん(右)。事前のヒアリングに基づき、手持ちの服とのコーディネートもアドバイスしながら、顧客の希望に応える |
自宅に買い物に
シンクタンクに勤務する神奈川県内の女性(39)は1歳児の母。今春、パーソナルスタイリストに依頼し、自宅で手持ちの服を見てもらったうえで、買い物にも同行してもらった。
スタイリストに支払った料金は、1時間のクローゼットチェックでは交通費約2000円と、何通りものコーディネートを写真で提案してもらう費用約1万4000円、2時間の買い物同行では約1万7000円だった。
「子供が小さく、ゆっくりと買い物に行けず、おしゃれをするのが面倒になってきていたので、『これでは、いけない』と頼みました」という女性。「普段着になっていた手持ち服が外出着として蘇りました。手持ち服と重なるものや似合わないものをその場でアドバイスしてもらえたので、効率よく買い物ができました」とうれしそう。
女性は今秋も同じスタイリストに同行してもらい、秋冬物のショッピングを楽しんだ。
紹介サイトも
インターネット上にサイト「ファッションプランナー」を開設し、1月から東京を中心にパーソナルスタイリストの活動を行っている井上志津佳さんは、18年のファッションアドバイザー歴を生かしている。
顧客の中心は30〜40代前半の女性。子育てをしながら仕事を持っているケースが多いという。 依頼の大半は買い物への同行。11月からは、手持ち服の写真をメールに添付するだけでコーディネートのアドバイスが受けられる月額3150円のサービスも始めた。
「若いころに着ていた服が似合わなくなったり、サイズが合わなくなったりしても、ブランドを新しく探せないという方は多い。公園デビューのために依頼してくるお母さんもいます」という井上さん。一方で、「依頼してくる方は皆さん、できるだけ出費を抑えたいとも考えていますから」と話し、新しい服の購入を無駄に勧めないことを心がけているという。
井上さんのようなサービスを紹介するサイトも登場した。その名も「パーソナルスタイリストデータバンク」。1月に開設され、約15人が登録している。
運営するプランナーの所健一さんは自らも東京を拠点に、母子向けサービス「ファムスタイル」をサイト上に今春、立ち上げた。30代前半が顧客の中心という。
所さんは「母子向けの雑誌がこぞって『きれいなママ』を提案している。子供がいてもファッションに手を抜きたくないお母さんが増える一方、あふれるブランドの数に自分では選びきれない人も多い」と話す。
個性も考慮
アパレル業界も新たなサービスに乗り出している。アパレルベンチャー「エニーズ」(大阪)は昨夏、顧客の専属スタイリストになるスタッフを「キャラリスト」(キャラクターとスタイリストをつなげた造語)と名付け、男女向けオーダーメードスーツを受注する事業の全国展開を始めた。
キャラリストは7人。顧客の体形はもちろん、職種、尊敬する人、好きな音楽といった“個人情報”もデータベース化したうえで、トータルコーディネートを手がける。
代表の川崎昌子さんは「1人のキャラリストが同じ顧客を繰り返し担当します。髪質を熟知した美容師に切ってもらうと安心するのと同じ考え方です」と話す。
4年前に個人向けスタイリストサービス「レアリゼ」(東京)を設立し、著書に『男の「外見」コーチング』がある三好凛佳(りんか)さんは、「専属のスタイリストは、商品の売り上げに縛られず、客観的なアドバイスができる。そこに消費者からの信用を得ている」と話している。