なつかしいアニメなどのキャラクターの展覧会が最近、相次いでいる。今年は「鉄人28号」誕生から50年、「ウルトラマン」のテレビ登場から40年。英国のSF人形劇「サンダーバード」も日本上陸40年の節目にあたる。スーパーヒーローの輝きを求めて、かつての少年たちが駆けつけている。
次々に新しいシリーズが登場し、幅広い世代に多大な影響を与えたヒーロー、ウルトラマン。横浜市中区の放送ライブラリーで開催中の「ウルトラマン伝説展」(2月4日まで)では、「ウルトラQ」から「ウルトラマン80」までを一部上映し、着ぐるみやジオラマ、台本なども紹介。東京・渋谷のパルコミュージアムでも、ウルトラマンや怪獣の造形をアートの観点でとらえる「オブジェクツ・サブジェクツ」展(31日まで)が開かれている。
鉄人28号、仮面の忍者赤影、魔法使いサリー、三国志…。幅広いジャンルで質の高い漫画を生み出した横山光輝(1934〜2004)の回顧展(川崎市市民ミュージアムで1月8日まで)も見逃せない。ちなみに同館の次の企画は「みんなのドラえもん展」(1月20日から)だ。
一方、渋谷のパルコミュージアムで開かれていた「サンダーバード イン ジャパン」展(現在は広島パルコで開催中)では、テレビ映像や主人公・トレーシー一族のスタイリッシュな人形(撮影用と同寸)を前に、連れられた子供よりお父さんの方が楽しんでいた。広報担当者によれば、当時なかなか手が出なかったプラモデルを中年男性が2つ3つと買っていったそうだ。
サンダーバードのプラモデルといえば、勇ましいSF戦闘シーンの箱絵で知られる画家、小松崎茂(1915〜2001)の回顧展も、昨年から今年にかけ、全国5カ所で開かれ好評を得た。
“なつかしキャラ”の展覧会が相次いでいるのは、単に節目が重なったからというだけではなさそうだ。開館当初から漫画をクローズアップしてきた川崎市市民ミュージアムの湯本豪一・学芸室長は、「オジサンたちがニヤニヤしながら(展示を)見てますね。彼らが小さいころ、日本は高度成長期で活気にあふれていた。今は貧しくても、働けばどんどん豊かになれると信じられた。当時夢中だったヒーローに、その時代の空気をオーバーラップさせているのでは」とみる。
壮大な宇宙の空想世界も、宇宙開発時代に入った1960年代には身近になりつつあった。環境汚染や生命科学の弊害など、戦闘アニメの多くには教訓的メッセージも込められているが、総じて明るい未来を提示しており、昨年の映画「ALWAYS 三丁目の夕日」に代表される“昭和レトロブーム”と同じ郷愁を誘うのかもしれない。
また、ある美術館関係者は「アニメや漫画の展覧会を美術館で行う抵抗感がなくなってきた」と話す。ここ数年、スター・ウォーズ、ジブリ、ガンダム、ディズニーなど、以前はサブカルチャーとして軽視されがちだったテーマを美術館・博物館が真正面から取り上げるようになった。アニメや漫画の“地位向上”とともに、経営が厳しい全国の美術館にとっては、漫画ファンの動員、キャラクターグッズの売り上げは大きいという。
先月末には、全国で初めて漫画を総合的に扱う「京都国際漫画ミュージアム」(京都市)がオープン。漫画を日本文化として学術研究する機運が高まっている。今後も、美術館でなつかしのキャラクターに出合う機会が増えそうだ。