忘年会シーズンが到来。いい気分で酔っぱらって気がついたら無情にも最終電車は去った後…。そんな深夜の“帰宅困難者”をフォローするサービスが広がりをみせ、それぞれ人気を集めている。終電後の“集客争い”は、「より安く」をキーワードにサービスのアイデア合戦の様相を呈している。
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国際興業が運営する深夜バス。都心からに限らず、終電後に郊外のターミナル駅(大宮駅、南浦和駅など)から発車する便も増やしている(撮影・森浩) |
タクシーの2割
「終電後」にいち早く着目したのはバス会社。最終電車が去った後、近郊まで走る「深夜バス」はちょっとした人気だ。
東武バス(東京)では、11日から「ミッドナイトアロー久喜」の運行を開始する。終電が行った後の午前0時45分に東京都足立区の北千住駅から埼玉県久喜市の久喜駅までを結ぶ。同社ではこれまでに「川越行き」「柏行き」など5路線を運行しているが、今回の久喜行きは走行距離48・4キロと、これまでの最長距離となる。同社は「まだまだ遠い距離にもニーズが高い地域がある」と説明する。
こうした深夜バスは東京都心部発を中心に10年ほど前から運行が始まっている。運賃は各社ともおおよそ2000〜3000円台が中心で、タクシーの2割程度に抑えられることから幅広い人気を集め、いまだに新規参入が相次ぐ。
国際興業(東京)でも池袋駅−埼玉県南部行きなど、午前1時20分まで便をそろえる。「電車よりも1時間遅く都心にいられる」と同社はメリットを強調する。
格安でホテルに
電車も深夜バスもなくなった。タクシーは運賃がかさむ…。「そんなときにピッタリのサービスです」と胸を張るのは大阪商工会議所地域振興部の堤陽一さん。
府内の主要ホテルでは昨年12月から、深夜にチェックインした宿泊客を対象に料金の割引を行う「ミッドナイトチェックイン」を展開している。96のホテルが、空室を最大82%(平均41%)割引で提供する。最も遅いホテルで深夜零時まで予約を受け付ける。ホテル側としても、空き部屋を解消できるというメリットがある。今年8月末までに8287人が利用した。「数字はだんだんと伸びており、根付きつつある」と堤さん。
料金分かります
一方、タクシー会社も活発化する深夜の集客合戦を指をくわえてみているわけではない。
料金が安い「乗り合いタクシー」が少しずつ広がっているという。例えば、7月に「ミッドナイト・シャトル」をスタートしたのは宮崎市内のタクシー3社。9人乗りのジャンボタクシーで金、土、祝日の前日に、宮崎市内の繁華街から、郊外都市へ運行する。タクシー運賃の3割程度で乗車可能だ。運営するMR交通社長の吉本悟朗さんは、「終電がなくなった後という側面もあるが、飲酒運転を防止するという意味もある」と説明する。
また、タクシーで帰りたいが、料金が心配−そんなときに便利な「タクシーネット」(http://www.taxisite.com/ 携帯 http://mb.taxisite.com)も登場した。現在地と、行き先の住所を打ち込めば、料金をはじき出すことができる。そのまま提携しているタクシー会社から配車を依頼することも可能だ。運営会社では「終電直後(午前0〜1時ごろ)に携帯電話からのアクセスが集中しています」と、その人気ぶりを語っている。
急激に台頭 マンガ喫茶
“終電後の世界”で台頭しているのがマンガ喫茶だ。
インターネットポータルサイトgooが10月、「始発電車まで時間をつぶす場所ランキング」を聞いたところ、「ファミリーレストラン」「カラオケボックス」を抑えて、1位となったのが「マンガ喫茶」だ。特に男性ではその傾向が強く、2位のカプセルホテルを大きく引き離した。
全国約3500店(日本複合カフェ協会まとめ)といわれるマンガ喫茶は日々増加中で、「朝まで5時間1500円」といった「ナイトプラン」を用意する店舗がほとんどだ。「『いざとなったらマンガ喫茶で過ごせばいい』という傾向にある。ライバルはタクシーよりもマンガ喫茶といえるかもしれません」と深夜バス業者。終電後の“集客争い”はさらに激化しそうだ。