携帯電話会社を変更しても番号を継続できる「番号ポータビリティー」(番号継続制度)が始まって1カ月以上が過ぎ、意気込んで迎えた緒戦の結果が出た。だが、各社の過熱ぶりとは裏腹に、先月末までの制度利用者は累計約68万人と携帯契約者のわずか約0・7%にとどまり、予測より鈍い反応となった。一方で、ドコモが創業以来初の純減に転じ、制度の影響力も見せつけた。制度の影響はなお続くため、各社は年末や来春の商戦に向け、販売テコ入れに躍起だ。
携帯各社は番号継続制度の導入に伴い、大量のテレビCMや広告宣伝を行い、顧客獲得に奔走した。ソフトバンクは「通話料0円、メール代0円」など後に問題を引き起こし、ドコモはソフトバンクの新料金プランとの比較広告を店頭で配布するなど、つばぜり合いが続いた。
顧客争奪の最前線となる家電量販店や販売代理店の競争も熾烈だ。関係者によると、ヨドバシカメラでは入り口近くの“一等地”の月額賃料が約450万円に高騰。ソフトバンクが競合他社から奪取に成功するなど、水面下の攻防は激しい。ある携帯会社は「大手量販店の担当者全員に端末を無料配布している」(関係者)ほどで、優良量販店の囲い込みに仁義なき戦いが表面化した。
だが、ふたを開けると利用者の方が冷静に対応。音楽サービスで人気のあるauに顧客が流れる一方、ドコモとソフトバンクは純減に沈んだ。
全体の約10%が利用するという当初の市場予測も大きく遠のいた。開始当初の8日間には累計約20万人が制度を利用したが、ビックカメラ有楽町店では「制度導入前に比べて来店数は1・5倍増えたが、当初ほどの過熱ぶりはない」と嘆き節も聞こえる。民間シンクタンクでは「メールアドレスや楽曲データなど番号以外が移行できず、利用に5000円前後かかることで慎重になった」と分析する。
一方、auに顧客を奪われたドコモとソフトバンクに注目が集まる。
ドコモは12月以降に店頭での端末価格が下落。量販店に払う販売奨励金の事実上の積み増しを行って営業攻勢に出ている。足元の客足は戻りつつあったが、7日に三菱電機製の端末で電池不良問題が発覚。「12月は純増に戻す」(幹部)と意気込んだ直後に、出はなをくじかれた格好だ。
ソフトバンクは、新規契約者が寄与して11月の契約数が純増になったが、中身をみると、ネット接続サービス「ヤフー!ケータイ」の契約者は純減を続けたまま。主にプリペイド型携帯電話が底上げしたためで、得意のネットサービスを売り出すには顧客層の転換が急務になっており、付加価値の高い端末の品ぞろえに力が入る。
新制度での各社各様の取り組みが第2幕のどんな結果につながるか、利用者も目が離せない。
ドコモ初の純減 携帯11月分契約増減数
電気通信事業者協会が7日発表した携帯電話各社の11月分の契約増減数によると、最大手のNTTドコモが1万7500件減で創業以来初の純減に転落した半面、2位のKDDI(au、ツーカーの合計)は32万4900件の大幅な純増と明暗を分けた。3位のソフトバンクモバイルも6万8700件の純増だった。
各社は携帯会社を変更しても番号を継続できる「番号ポータビリティー」(番号継続制度)の利用に伴う11月分の増減数も発表。KDDIが21万7500件の純増だったのに対し、ドコモとソフトバンクはそれぞれ16万3000件、5万3900件の純減に陥り、緒戦は下馬評通りにauの独り勝ちとなった。
KDDIは年末商戦向けの新端末を例年より2カ月前倒しで投入。音楽サービスでも市場開拓が奏功し、若年層を中心に支持を得た。一方、シェア(市場占有率)5割超のドコモは、制度導入の影響を受けた。今後はドコモも主力端末が出そろうため「純減は一時的」とみられるが、7日発表した電池不良問題が影を落とす可能性もある。