幼い子供を連れて旅行に出かけるにはさまざまな不安が生じる。そんなお母さんの不安を少しでも解消してもらおうと、旅行各社がインターネット上の専用サイトを充実させている。子連れ旅行を成功させるためのテクニックのほか、子供と一緒に安く行けるツアーや「子供に優しい施設」などの最新情報も提供。旅好きのお母さんの力強い味方になっている。
ママさん社員が指南
「離乳食を旅先で探すのは大変なので、レトルトのベビーフードを持参しよう」「突然の発熱や脱水症、湯上がりの水分補給にアルカリイオン水を飲ませてあげて。お湯で溶かす粉末タイプなら、荷物になりません」
近畿日本ツーリストが9月に立ち上げた専用サイト「子供といっしょ!」では、同社のママさん社員が子連れ旅行のノウハウを指南。ブログも開設し、乳幼児が入浴できる温度の温泉などを自らが子供と利用した体験に基づき紹介。1日に約1000件のアクセスがあるという。
同社にとっては、専用サイトによってパンフレットを印刷するコストがかからず、最新の情報を更新できるという利点がある。担当するWeb営業部主任の佃亮子さん(36)は1児の母。佃さんは「旅行そのものをあきらめているお母さんも少なくない。子連れ旅行に優しいサービスがたくさんあることを知ってもらいたい」と話す。
「旅慣れ」も初心者
海外旅行を主に扱うエイチ・アイ・エス(HIS)は、専門窓口の「ファミリー専用デスク」を平成16年、トラベルワンダーランド新宿本社に新設したのに合わせ、専用サイト「こどもといっしょの旅」を開設した。
同社が16年に行った調査では、子連れの海外旅行で不安なことは「病気」が最多で、「渡航先の治安」「移動中の機内」が次ぐ。サイトでは、こうした悩みに答えるコーナーや、旅行者の体験談も掲載している。
ターゲットは30〜40代前半の親。「若いころから海外旅行に慣れた世代も、子供と一緒となると初心者。そのギャップを埋めるサービスを目指している」と主任の川口耕泉さん。11月にはサイトを一新させ、お得なツアー商品を前面に打ち出している。
このほかにも、日本旅行は専用サイト「トラベルママぷらざ」、JTBはホームページの中で「ファミリー特集」などを設けている。
成長に合わせ計画を
旅行各社が子連れ旅行の情報提供に力を入れる理由には、子供の受け入れ態勢を充実させた宿泊施設や航空会社、観光施設が、国内外で増えている背景がある。だが、こうした情報を旅行者自身が収集するには限界があり、各地のサービスを取りまとめて発信することで、潜在的な旅行需要を掘り起こそうという狙いだ。
2児を育てながら豊富な旅行経験を持ち、ネット総合情報サイトのオールアバウトで子連れ旅行のガイドを行っている小暮祥子さん(37)は、「『子供が幼いうちは、旅行は我慢するもの』という風潮は薄れている」と話す。
4月に開設した個人サイト「徒然子連れの旅Blog」では、旅先での失敗談も積極的に書き込む小暮さん。子供も親も楽しめる旅行のポイントは、「幼稚園に入る前ならお母さんがいかに息を抜けるか、幼稚園以上なら旅先で子供が何ができるか、といったように成長に合わせた計画づくりが重要」と勧めている。
「子連れ」は増加傾向
財団法人日本交通公社の「旅行動向2006」によると、家族旅行に占める幼児連れの旅行の割合は、海外は平成13〜15年の3.1%から、15〜17年は2.4%とわずかに減ったものの、国内旅行は15年の6.3%から17年は7.2%と若干増えている。
幼児連れ(国内)・子連れ(海外)の家族旅行を出発日別でみると、国内、海外ともに夏休みが大型連休や年末年始に比べ圧倒的に多い。旅行のタイプでは、国内は「テーマパーク」、海外は「周遊観光」がそれぞれ最も多い。旅行費用は、国内が平均3万3200円、海外が同18万3300円となっている。