ヘアスタイルやドレスの絵が描かれた“魔法”のカードを本体のリーダーで読ませ、コンピューターグラフィック画面の女の子におしゃれをさせる。そして舞踏会やディスコで、ダンスをライバルと競う−。遊戯施設などに置かれたゲーム機「オシャレ魔女ラブandベリー」に、小学生や幼稚園の女の子が夢中になっている。
|
オシャレ魔女ラブandベリーの開発者、植村比呂志さん(撮影・山口暢彦) |
登場は2年前の10月。カード販売総枚数が2億1500万枚を超える大ヒットだ。カードは1枚100円で原則、ゲーム機本体にお金を入れて買う。
ラブとベリーは、登場し“対決”する少女2人の名前。「ラブは私の10歳の娘(愛さん)にあやかっています」とセガの開発チームリーダー、植村比呂志さん。一方のベリーはラブとの組み合わせの響きで決めたとか。
そもそも開発に手をつけたのは、世界のカブトムシが戦う同社のゲーム機「甲虫王者ムシキング」に続くヒットゲーム機を出したかったから。
当時、女の子向けのカードゲーム機はまだ存在せず、「うまくいくのか」という心配もあった。しかし男の子向けの「ムシキング」と競合させないため、女の子向けのゲーム機を作らざるをえなかったのだという。ちなみに「ムシキング」の開発も植村さんだ。
「実際にお金を払う母親の気持ちをつかまなければならない。非現実的な世界なら、すぐ離れてしまうだろう」
そんな信念から、開発の際はリアリティーにこだわった。ファッションはデザイナーが協力し、「わが子に着せたくなるものばかり」。ラブとベリーは、ゲームにありがちな、頭が大きく胴が短いアニメ風のキャラクターを避け、5・5頭身という現実的なスタイルにした。
フタを開けると狙い通り。子供より母親のほうが夢中になっている光景すらみられるようになった。
“活躍の場”を広げる「ラブandベリー」。11月には携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」用ソフトが発売され、来春には映画が公開される。「いま楽しんでいる女の子が20年後、自分の娘と遊ぶ姿を見てみたい」−。そう言って植村さんは笑った。