きょうから師走、「冷え症」の人には辛い季節がやってきた。女性の半数が自覚しているとされる冷え症。原因は、節食によるエネルギー不足や自律神経の乱れだという。対策にはどんな手だてがあるのだろうか−。
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薬酒のカクテルが楽しめるレストランバー「リ・バール」=東京・銀座(撮影・瀧誠四郎) |
「夏でもカイロ」
「体がいつも冷えている」「手足がじんじんする」−。花王が昨年、首都圏に住む10〜50代の女性約1000人を調べたところ、冬は5割、夏は4割の女性が冷えを感じていることがわかった。
冷えは男性よりも女性のほうが感じる人が多いという。なぜか。「女性の体は『快適温度』(暑くも寒くも感じない温度)が男性よりも3度ほど高いので、同じ気温でも寒く感じる。スカートなど体の露出が多いファッションも原因です」。こう語るのは、女性専門の漢方診療所「麻布ミューズクリニック」院長、渡辺賀(か)子さん。
冷え症を起こすメカニズムは、(1)体でうまく熱を作れていない(2)熱が作られていても、体内にうまく配られていない−の2つがあるという。
(1)の原因として考えられるのは、例えばダイエット。エネルギーの元となる食べ物の取り込みが少ないので、熱が生まれない。運動不足も大きな要因だ。「1日の熱量の6割は筋肉で作られる。オフィスでパソコンに向かいっぱなしだと体に熱が生まれません」
また、(2)の原因は「自律神経の調節機能の狂い」。自律神経は「寒い」と感じると、体の表面の毛細血管を収縮させて、血液による熱の運搬を滞らせる。これは体表からの放熱を防ぐためだが、同時に体表は冷えてしまう。正常な人は、ある程度時間がたつと、自律神経の調節で毛細血管が拡張し血行がよくなるが、冷え症の人は調節機能が狂っており毛細血管が広がらない。その結果、熱の運搬は悪いままで、冷えっぱなしになるというわけだ。
「オフィスなどで空調が完備されるようになったことが大きい。一年中、同じような気温の中で暮らしていると、調節能力がおかしくなる」と渡辺さん。診療所に来る人の中には、夏でもカイロが手放せない“重症”の人もいるという。
薬酒も効果的
症状を和らげる手段としては「まず入浴を心がけること」と渡辺さん。「38〜40度のぬるめのお湯につかると、自律神経のスイッチが切り替わりリラックスする。すると血流がよくなり体のしんまで温かくなります」
食べ物も大切。体温が下がっている朝に簡単でも温かいごはんを食べることは重要だ。「物理的に温かい食べ物を取り込むと熱も取り込まれますし、内臓が働き出すことによる熱も生まれます」
そしてもう1つ、渡辺さんが勧めるのが「薬酒」。薬酒とは、自然素材が原料の生薬などを混ぜたお酒のことで、血のめぐりをよくする働きもある。「(市販の)薬酒は万人が飲めるよう、効き目がきつくないものをブレンドしています」
最もポピュラーで手に入りやすい「養命酒」の製造元「養命酒製造」中央研究所の小島暁(さとる)所長によると、養命酒には14種の生薬が含まれ、その中の「ケイヒ」「コウカ」などが血流を良くするという。小島所長は「毎日飲み続けるのが効果的。(冷えたからといって)一度に大量に飲むと副作用があるかもしれないので、『1回20ミリリットル・1日3回』という決められた量を守ってほしい」と話している。
良薬は口に旨し? バーにも登場
滋養強壮に効果があり、冷え症のほか虚弱体質、消化促進などにも力を発揮する薬酒。歴史は古く、中国では約2000年前の書物にその効用が記されている。西洋では中世に修道院で盛んに作られたとされ、現在はリキュールとしてバーなどで楽しんでいる。
日本には20以上の薬酒メーカーがあるが、全国展開しているのは数社のみ。マーケットシェア約9割という「養命酒」を出している養命酒製造のほか、「陶陶酒」を発売している陶陶酒製造、「高麗人参酒」を出しているロート製薬などがある。これらの薬酒は薬局やドラッグストア、酒販店などで購入することができる。
そして薬酒のカクテルをおいしく飲めるバーも。東京・銀座の「リ・バール」は薬酒をオレンジジュースやトマトジュースなどと混ぜ、臭いや色を和らげるなどしたカクテル約80種類を扱っている。1杯1050円。
デコポンとオレンジのブレンドジュースと薬酒を混ぜ、ビールを注いだカクテルを飲んでみたところ、さっぱりとしていて薬臭さもなく美味だった。店長の小林直也さんは「薬酒カクテルとの出合いを健康や食生活を考え直すきっかけにしてほしい」と話している。