日本の秋の味覚を代表するマツタケの、北朝鮮からの輸入量が激減している。北朝鮮が今年7月、「テポドン2号」を含む7発のミサイルを連射したことによる「北アレルギー」に配慮し、業者が輸入を手控えているためだ。これまで北朝鮮との貿易を担ってきた日本海側の各港でも、北朝鮮船の姿はめっきり減少。中国に次いで2番目の輸入量だった北朝鮮産マツタケは、シーズンとなる8月になってもほとんど店頭に並んでいない状態だという。毎年販売してきた百貨店も「今年は無理かも」とあきらめムードすら漂わせている。
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百貨店のマツタケ売り場。北朝鮮産は姿を消し、中国産が並ぶ |
輸入を自粛
昨年の北朝鮮からのマツタケ全輸入量の約3割、210トンを扱った京都府の舞鶴港。7月5日の北朝鮮によるミサイル連射を受け、荷役業者が北朝鮮船の取り扱いを自粛した。その後、日本側の業者の強い要望を受けて同月下旬には取り扱いを再開したものの、現在も輸入品全体が低迷している。
例年、7月には北朝鮮船からマツタケの第1便が届くが今年は8月半ばを過ぎてもゼロ。大阪税関舞鶴税関支署は「今後もマツタケが来る見通しは立っていない」と話す。
輸入品の3割を占めていたスーツなどの衣類は入りつつあるが、自粛の影響で低調な状態が続いており、「冬物衣料に影響が出るかもしれない」と懸念する。
カニはOK?
北朝鮮産マツタケの最大の輸入港で、昨年は503トンが輸入された鳥取県の境港でも、マツタケを運ぶ北朝鮮船は、8月に入ってもほとんど姿を見せていない。神戸税関境税関支署は「例年の数十分の一というレベルにとどまっている」と説明する。
一方で、同じ北朝鮮からの輸入食品でも、魚介類、とりわけカニの輸入は順調そのもの。マツタケと違って、主として加工品となるカニは原産地が表示されないため、「北アレルギー」の影響を受けないからだ。
また、舞鶴港に入れなかった船が境港に回り、衣類などを持ち込んでいることから、「輸入品の全体量は伸びている」という皮肉な結果になっている。
中国は豊作
こうした北朝鮮産マツタケの状況について、大阪市内の卸売会社は「日本の市場で『北朝鮮のマツタケはいらない』という拒否反応が続いているため、在日の北朝鮮系商社が輸入に慎重になっているようだ」と解説。現在は「少しずつ輸入しては、反応がよくなる時期を探っている」状況だという。
一方、北朝鮮産のライバルだった中国産マツタケは、今年は豊作だったこともあって、好調に入荷が続いている。
昨年まで北朝鮮産を扱ってきた大阪市内の百貨店の担当者は「この調子では、北朝鮮産は今シーズンはもう無理ではないか。もともとメーンは中国産。影響はあまりないと思う」と話している。