気温が下がるに従って需要が本格化する缶コーヒー市場が、早くもヒートアップしている。清涼飲料各社は秋の新商品を相次いで発表。糖分が通常品より少ない「微糖」のような甘さを抑えた商品が目立つのが“秋の陣”の特徴だ。缶コーヒーは自販機やコンビニエンスストアでの販売量が多く、各社の収益にも大きく貢献するだけに、涼しくなるに連れて商戦は熱気を増しそうだ。
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コンビニエンスストアの棚に並ぶ缶コーヒー。成長する「微糖」の市場に、清涼飲料各社が注力している=東京都港区のエーエム・ピーエム六本木アーク八木ヒルズ店 |
キリンビバレッジは、商品名に「微糖」の文字を盛り込んだ新商品「ファイア 挽(ひ)きたて微糖」を9月5日に発売する。5月の発売から2カ月半で5000万本を売る人気商品となった「挽きたて工房」に新たに「微糖」タイプを加えることで、さらなるヒットを狙っている。
サントリーも9月に「ボス」の微糖商品をリニューアル。「W・E・B【微糖】」は商品名に従来商品の頭文字を取ることで「シンプルで伝わりやすく」(同社)し、微糖の2文字を目立たせた。アサヒ飲料は「ワンダ」の従来品より糖類を69%カットした「ショット&ショット69」で勝負する。
一方、糖分の少なさをあえて打ち出さないのが日本コカ・コーラの「ジョージア ファイブブレンド」。微糖の主力商品との競合を避けるためだが、本格派の味わいを強調した売り込みをかける作戦だ。同社は「スタンダードビター」と分類する微糖やコクのある商品を、新たに11、12月にも発売する予定だ。
独特の甘さが売りのポッカコーポレーションは9月5日、主力の「ポッカコーヒーオリジナル」を発売35年目で初めて大幅刷新。甘みをやや抑えることで「コーヒーの質感を高めた」(堀雅寿社長)としている。
各社が微糖商品に本腰を入れる背景について、日本コカ・コーラの篠原幸治マーケティング本部副本部長は「健康志向の高まりで、糖分の少ないコーヒーが好まれるようになったため」と指摘する。
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が話題になり、肥満をはじめとする生活習慣病予防が注目される中、カロリーの低い無糖や微糖コーヒーに対する需要の高まりが各社の商品戦略を動かしているというわけだ。
加えて、エスプレッソなど苦みの強いコーヒーを提供するカフェが普及し、消費者が甘くない本格派コーヒーの味に慣れてきたことも微糖化に拍車をかけている。
平成17年の「微糖」市場について、サントリーでは前年比30〜40%増、アサヒ飲料は無糖も含めて同21%増と分析。成長を続ける微糖市場に各社とも大きな期待を寄せている。