新アルバム「モダン・タイムズ」
ディランが歌う「死と愛」
8月22日(火) 東京朝刊 by 岡田敏一
米フォーク・ロック歌手、ボブ・ディランが30日、新アルバム「モダン・タイムズ」を発売する。歌詞こそ死や終末を意識させる陰鬱(いんうつ)なものが目立つが、ディランの歌声は1980年代の傑作「インフィデル」(83年)などで聞かれる軽やかさや力強さを取り戻している。米国では今もあらゆる分野で最も影響力のあるミュージシャンであり、新作発売に合わせて北米公演ツアーも再開しており、さらに注目を集めそうだ。
新作は前々作「タイム・アウト・オブ・マインド」(97年)、前作「ラヴ・アンド・セフト」(2001年)に続く3部作の掉尾(とうび)を飾る作品。古典的な伝承歌のカバーを含む全10曲が収録され、初回限定版には貴重なライブ映像のDVDもついている。
冒頭の「サンダー・オン・ザ・マウンテン」やラストの大作「エイント・トーキン」など、長引くイラク戦争やテロ攻撃への不安から逃れられない“戦時下”の米国の雰囲気を反映するように、死や終末思想に裏打ちされた深みのある歌詞が目立つ。その一方で、歌声は、終盤のハーモニカ演奏が印象的な詩的な恋愛歌「スピリット・オン・ザ・ウォーター」に代表されるように楽しげで軽やかさが耳に残り、80年代の名作群を彷彿(ほうふつ)とさせる。
2004年に初の自伝を刊行。米CBSテレビの老舗報道番組の長時間インタビューに応じ、今春からは衛星ラジオのDJを務めるなど、かつてのメディア嫌いのレッテルを自らはがした。88年から断続的に続いている世界公演ツアー「ネヴァー・エンディング・ツアー」もこの新作発売に合わせ、今月12日から北米地域で再開した。
さらに、米アップル社の楽曲のネット販売サイト「アイチューンズ・ミュージックストア」で新作の購入を予約すれば、北米ツアー公演のチケットの優先販売権が入手できるという新たな取り組みにも挑戦。ディランはアップル社のパソコンのポスターに登場したこともあるだけに、「(アップル社のCMに)U2に代わってディランが大々的に登場するのでは」(米業界関係者)との声も出ている。
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ボブ・ディランの新作「モダン・タイムズ」のジャケット |
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