新制度導入前に様子見?
携帯解約率が過去最低水準 顧客囲い込みが奏功?
8月21日(月) 東京朝刊 by 富岡耕
携帯電話各社の解約率が過去最低水準で推移している。料金値下げなどによる顧客囲い込みが奏功した結果とみられるものの、10月24日に始まる携帯電話の「番号ポータビリティー」(番号継続制度)を前に、利用者が他社への移行を手控えているためとの見方もある。解約率低下で各社の業績も好調だが、今後の顧客動向は分析しきれず、戦々恐々と身構えているのが実態だ。
NTTドコモの今年4〜6月期の解約率は、0・64%と過去最低を記録。2年前までは1%超で推移しており、急改善した。KDDI(au)も4〜6月期は過去最低の1・04%で、前年同期に比べて0・22ポイント改善した。ソフトバンク傘下のボーダフォンも1・50%と過去最低水準で推移している。
この背景としては、10月の番号ポータビリティー導入を見すえて、各社が料金やサービス競争で顧客囲い込みを進めたことが挙げられる。
パケット通信の定額制をはじめ、家族割引や長期割引、無料通話の繰り越しサービスなどを相次いで開始。1人あたりの月間平均利用料(4〜6月期)は、ドコモが前年同期比0・6%減の6900円、auが同3・4%減の6810円など軒並み減っている。
このため、利用者は今のままでも料金的な恩恵を感じ、「他社に移る理由が減っている」(ドコモ幹部)との見方が浮上。番号ポータビリティーの動向調査をした野村総合研究所の北俊一上級コンサルタントは、「昨年より移転希望者が減った」と分析する。
ただ、態度を決めかねている利用者は多いとされ、10月に端末やサービスを見比べて判断するため「現在は嵐の前の静けさ」(業界関係者)との見方も根強い。
ドコモの中村維夫社長は「現在の解約率は低すぎる。10月以降に3、4割増えるだろう」と警戒する。KDDIの小野寺正社長も「想定以上に解約率が低い。10月以降が勝負になる」と指摘。ADSL(非対称デジタル加入者線)で“価格破壊”を起こしたソフトバンクの携帯参入もあって、都内の大手量販店では「携帯端末を買い控えている人が多い」と話す。
携帯電話会社は販売店に払う販売奨励金が1台あたり4万円弱と大きな負担になるため、収益向上には解約率の低下が極めて重要な要素。それだけに、番号ポータビリティー導入後に利用者がどう動くのか、携帯電話会社にとっては、手放しでは喜べない神経戦が続きそうだ。
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