88の鍵盤上を20本の指が舞うように動く。目にも止まらぬ速弾きでブギウギリズムを刻んだり、ラテン風のメロディーを陽気に奏でたり。めくるめく多彩なオリジナル曲をピアノの連弾で演奏する異色の兄弟デュオだ。
|
[左]連弾するデュオ「レ・フレール」[右]斉藤守也さん(右)とデュオを組むのは弟の圭土さん(撮影・安田幸弘) |
「近い位置なので呼吸を感じられるのが連弾の魅力」と兄の斎藤守也。「すごい広がりがあるんですね。ひとりで弾くより楽しいことがいっぱいある」と弟の圭土。ときに2人の腕を交差させ、ときに中腰で力強く弾く姿はスリリングで、斬新な音楽は苦手という人の気分さえ高揚させる。
7人兄弟の長男と二男。ピアノを学ぶため、ともに15歳でルクセンブルク国立音楽学校へ留学し、帰国後はそれぞれソロ活動で力をつけた。
守也いわく、「僕は旋律に対する思いの入れ方が得意で、バラードでそれが出やすい。圭土は即興性とリズム感ですね。すっごいですよ(圭土の)パワーは」。
そんな2人が「レ・フレール」を4年前に結成したのは成り行きだったという。「小さいころから2人で弾いていたので遊びの延長みたいな感じだった」と圭土。
地元の神奈川・横須賀で行った最初のライブに訪れたのは家族だけだった。だが、人気は急上昇し、今では演奏会を開けば満員となり、公演依頼は引きも切らない。
ライブで披露する楽曲の9割9分がオリジナルだ。特徴は、その自作曲がまるで呼吸するかのように本番中に即興演奏で変化していくこと。「お客さんの手拍子に乗せられて変わっちゃったり」(圭土)「どっちかの間違いがきっかけで変わったり」(守也)。
ファンも心得たもので、「今日はどんな風になるんだろう」と、変化を楽しみに繰り返し訪れる人も多いという。
11月にメジャーデビューが決まった。それに先立ち9月2日には国内有数のジャズ祭「東京JAZZ」へ初出演する。チック・コリアやハンク・ジョーンズといったジャズピアニストの巨匠たちと同じ舞台に立つ。
「さすがにこんな兄弟はいないだろうというのを見てほしい。ハンク・ジョーンズでも兄弟がいなければできないぞ、みたいな」(圭土)
日進月歩で飛躍してきた2人が、さらに大きな一歩を踏み出す。
【Q】小さいころ兄弟げんかは
「けんかはないですね、5歳離れているので」(守也)
「(兄弟が)7人いるとジェネレーション・ギャップが出て、付き合いが多い兄弟と少ない兄弟が出てくる」(圭土)
【Q】昔、あこがれた職業
「ボクサー、すし職人、大工。けっこう職人的なことにあこがれました」(守也)
【Q】兄弟だと感じる瞬間
「演奏中に(守也の)汗が垂れてきて、普通は他人だと嫌だと思うんですけど、そんなに抵抗はない」(圭土)
【Q】今、ほしいものは
「マイスタジオ」(守也)
すかさず、「(スタッフを見ながら)お願いします」(圭土)
【Q】ライブで“披露した”サプライズを
「(連弾中に)いきなり立っていなくなる。相手(圭土)に対するサプライズ」(守也)
「決められた楽曲をやっているとマンネリ化するんですけど、パッと(いなくなって)刺激を与えるといい演奏になったりするんですね」(圭土)