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コンビニ四苦八苦、居酒屋ではプラスチック
「割り箸」急騰で「マイ箸」急増
8月18日(金) 大阪夕刊 by 天野健作
中国からの輸入が大半を占める割り箸(ばし)の価格が昨年末から急騰している。コンビニや弁当屋では卸値を上げたところもあり、居酒屋チェーンでは割り箸そのものを廃止したところも。一方で、自分専用の「マイ箸」が見直され、売り上げが3倍増になった百貨店もある。国内では、2階建て一軒家に換算して年間1万戸分の木材が消費されているという割り箸。環境保護の高まりからも「割り箸はタダ」でなくなる日も近い。

店頭に並ぶ「マイ箸」。先に刻みのついたラーメン箸など用途別のものも人気が高い=大阪市北区の阪神百貨店
店頭に並ぶ「マイ箸」。先に刻みのついたラーメン箸など用途別のものも人気が高い=大阪市北区の阪神百貨店


価格5割増し
日本割箸輸入協会(奈良県五條市)によると、日本の割り箸は中国からの輸入が97%を占める。昨年12月に突然、中国側が30%の値上げを通告。今年3月にはさらに20%を打診され、このまま進めば1年で計50%もの値上げとなる。価格はすべて中国政府が決めているため、それ以下での購入はできず、同協会は「業界始まって以来の出来事」と戸惑っている。

原因は、中国の住宅需要の高まりなどによる森林の乱開発や燃料費の高騰。原材料は中国東北部のシラカバや南部の竹だが、近年、行き過ぎた開発を反省する機運が高まり、伐採を控えるようになった。このため、原材料の3割ほどはロシアなどからの輸入材が占めるようになり、中国側がそれを加工、輸出しているという。

1膳5円徴収
こうした値上げ圧力に押され、大手コンビニ「ファミリーマート」(全国6700店)では2月、店舗向けの割り箸の価格を10%超上げた。ただ、末端の店では商品価格に転嫁できず、「売り上げの3分の1を占める弁当類のほかカップめんなどにも割り箸を付けている。これ以上価格が上がってはやっていけない」(大阪市内のコンビニ店)との声も。

「ミニストップ」(全国1640店)では6月から、東京、千葉の3店舗で割り箸1膳(ぜん)につき5円を徴収する実験を始めている。

年間3億膳以上の割り箸を渡すという持ち帰り弁当チェーン「ほっかほっか亭」(全国2400店)を展開する「プレナス」(福岡市)でも、店舗に売り渡す箸の価格を上げており、「輸入先の見直しも検討している」という。

一方、いち早く手を打ったのが、八剣伝や酔虎伝などの居酒屋を全国で約760店展開している「マルシェ」(大阪市中央区)。今年2月、全店舗で割り箸の使用をやめ、プラスチックの箸に代えた。同社広報室によれば、年間のコスト削減効果は1500万円。「使い回しは衛生的でない」という客からの苦情もあったが、おおむね好意的に受け入れられているという。割り箸価格高騰に悩んでいる同業者からも、同社へ問い合わせがあったという。

高級8400円
「阪神百貨店」(大阪市北区)では、5月末に箸売り場の面積を拡大し、これまでの倍の260種類の箸を扱ったところ、7月の売り上げは3倍増に達した。売り場責任者の坂本有香さんは「口の中に入れるものだから、『マイ箸』にこだわる人が増えてきた」と話す。漆を100回以上塗るなど1年かけて作った1膳8400円の超高級箸も、年配の夫婦が購入していくという。

国産塗り箸の8割を生産する福井県小浜市の若狭箸工業協同組合でも「環境への配慮から『マイ箸』需要はさらに高まる」とみている。同組合によると、5年ほど前から、「ラーメン箸」「焼き魚箸」「納豆箸」など、用途によって形状が異なる箸も人気が高まっており、割り箸高騰が思わぬ追い風になっているようだ。

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