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“回帰”現象 呼んだのは独自路線
水木しげるさんに聞く 妖怪ブーム 鬼太郎の生みの親
8月17日(木) 東京朝刊 by 篠原知存
妖怪が脚光を浴びている。リメーク版の「妖怪人間ベム」が衛星テレビで放映され、妖怪漫画「どろろ」(原作・手塚治虫)が映画化。「ゲゲゲの鬼太郎」も、実写版映画の撮影が始まり、DVDも発売されるなど“平成の妖怪ブーム”ともいえる状況だ。約40年前に第一次妖怪ブームを巻き起こすきっかけを作った鬼太郎の生みの親、水木しげるさん(84)に話を聞いた。

妖怪ブームの生みの親である水木しげるさん
妖怪ブームの生みの親である水木しげるさん


「ゲゲゲの鬼太郎」は紙芝居として作ったものが原点だった。昭和40年から週刊少年マガジンに連載されて人気を集め、アニメ化された。

「きっかけっていうのはとくになかったなぁ。もともと墓場とかが好きでね(連載開始当時のタイトルは『墓場の鬼太郎』)。自然に出てきた。苦心惨憺(さんたん)して作るっていうんじゃなくて、川の水が流れるみたいにすーっと出てきた」

TVアニメの第1シリーズは43年から白黒で65話を放映。46年からの第2シリーズはカラー版で45話続いた。鬼太郎、目玉おやじ、ねずみ男、ぬりかべ…。独特のキャラクターによって展開される怪奇ドラマには、社会風刺や文明批判も盛り込まれ、一躍ヒット作に。

「おもしろがってやってたら、かなりの数(の妖怪)が出てきた。出てくるまま描いていて、はっと気がつくと世間が騒いでたって感じだね」

水木さんの代表作「ゲゲゲの鬼太郎」(提供写真)
水木さんの代表作「ゲゲゲの鬼太郎」


最近の妖怪ブームのなかでも、鬼太郎はやっぱり別格のようだ。ポニーキャニオンが、TVアニメの第1、2シリーズのDVDボックスを発売する(9月30日まで予約分のみの受注生産)。また、ウエンツ瑛士が主演する実写映画も来春公開をめざして撮影が進む。

郷里の鳥取・境港では、妖怪オブジェが並ぶ「水木しげるロード」や「水木しげる記念館」が観光客を集めていたが、昨年から今年にかけてJR西日本が「鬼太郎電車」を走らせ、隠岐汽船が「鬼太郎フェリー」を就航させた。

ますます“妖怪化”が加速しているが、ご本人はさらっとこんなことをいってのける。「私にとっては幸運のキャラクター。メシを食えるようになったからね(笑)。正直、喜びっていうのはあんまりないんです。いまさら熱狂したり興奮したりはしませんね」。それはそうかもしれない。

聞きたかったのは、平成のいま、なぜ妖怪ブーム、鬼太郎ブームなのだろうかということ。なかなか素直な答えは返ってこなかったが…。

「子供向きと思って描いたことはないし、こうすれば(読者に)うけるとか考えたこともない。自分自身のために描いてきた。普通の漫画家とは違うかもしれないけど、自分が面白いか面白くないか、それだけ。なんでも独自路線でやってきたね」

十分に答えてもらった気がする。先生はアーティストですね。

「ああ、大芸術家だよ(笑)」

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