都心部が周辺域に比べて高気温となるヒートアイランド現象への対策がとして、昔ながらの「打ち水」が進化を遂げている。散布した水の気化熱で周囲の温度を下げるメカニズムを応用して、ゼネコン各社が"ハイテク打ち水システム"を相次ぎ開発、普及に乗り出しているのだ。最近では国や自治体も「打ち水」普及に熱心で、官民そろって「街を冷やす」動きを加速させている。
大成建設は、特殊パネルを並べた壁面にチューブで水を循環させ、しみ出した水の蒸発にともう冷却作用で周囲の温度を下げる「クールウォール」を開発した。同様のシステムが道路に使われた例はあるが、壁面への転用は業界でも初めて。
「壁面打ち水」ともいえる同システムは、実証実験によって、壁面周囲で感じる体感気温を2〜3度低下させることが証明された。
設置費用は1平方メートルあたり10万円以上かかるが、雨水を利用し、壁面内に水を送るポンプの電源は太陽光発電でまかなうため「省エネ効果もあり、地球に優しい」(同社)のも特徴の1つ。壁面パネルは、瓦やホタテの貝殻といった廃材、廃棄物を混ぜて作ることができ、資源リサイクルにも一役買うという。
大林組も「打ち水」効果に、芝生の蒸散効果を組み合わせた路面温度低下システムを開発した。
従来システムは路面全体をブロックで覆う構造だったが、新システムは芝生とブロックを組み合わせた。地下からの自動給水による「打ち水」効果と緑化・蒸散という「ダブルの冷却効果」が期待でき、路面温度は最大25度下げられるとか。
通常舗装の2倍の費用がかかるが、将来的には駐車場を中心に、年間2万〜3万平方メートルの受注を目指す考えだ。
国や自治体も「打ち水」によるヒートアイランド対策を推奨、支援をしている。
国土交通省は昨年、「打ち水」効果に関する調査を実施。「路面温度の低下や熱中症の予防効果などで一定を結果を得た」ことから、将来の保水性舗装の敷設に向けて、より効率的な散水時間や散水場所などの検討を進める方針だ。
東京都や横浜市、名古屋市などでは、市民の意識啓発を目的に下水再生水を「打ち水」用水として市民に無料提供している。また、民間非営利団体(NPO)などによる「打ち水」イベントも各地に広がっており、今後も「打ち水」普及への官民の取り組みは活発化しそうだ。