サッカーのワールドカップ(W杯)ドイツ大会が閉幕して1カ月。サッカー専門誌とスポーツ総合誌業界が期待した“特需”は、日本代表の成績不振により、一蹴(いっしゅう)されてしまったようだ。初出場を果たしたフランス大会(1998年)以来、拡大を続けてきたサッカー専門誌は約20誌。しかし、ニーズの多様化に伴う創刊や休刊も繰り返され、新たな読者獲得に向けて模索を続けている。日本代表はきょう16日にオシム監督就任後、初公式戦となるアジア杯予選イエメン戦を行うが、試合内容を含めて読者の興味がどう変わっていくのか、関係者は注視している。
「W杯での予選リーグ敗退のあおりをまともに食らい、苦戦を強いられた」。日本代表選手を主に取り上げるサッカー専門誌の関係者はこう振り返った。代表不振による影響も大きいが、それよりも「前回の日韓大会に比べれば国民的な関心の度合いが低かったのが要因」と話した。
逆に、世界の強豪やスター選手を取り上げる「ワールド系」サッカー誌は、代表不振の影響をほとんど受けなかった。
「ワールドサッカーキング」(フロムワン)の岩本義弘編集長は「大手出版社や専門誌が特別号を出すので、大きな伸びはないと予想していた。W杯期間中もおおむね通常通りの売り上げだった」と話す。
その一方、隔週刊のところを週刊に切り替えてサッカー記事を手厚く報道し、2度の完売を出すなど逆風に耐えたのが、スポーツ総合誌の雄である「ナンバー」(文芸春秋)だ。
「初戦で逆転負けした豪州戦のショックで一時的に売り上げが落ちたが、その後は順調に読者の関心が戻ってきた」と河野一郎編集長は話す。
4年に1度開催されるのW杯はサッカーファンにとっては1つの大きな区切りとなる。同時に専門誌だったサッカー誌業界は、サッカー人気と共に一般誌レベルのマーケットに成長したが、「すでにパイの奪い合いが起きている。W杯後に業界再編が進むのではないか」(関係者)との観測も根強い。
この考え方を証明するかのように、サッカーを重視してきたスポーツ総合誌「バーサス」(光文社)は先月、8月号での休刊。創刊2年で休刊となったことで、業界内では「長文の読み物というニーズの流れが変わったのではないか。読者のニーズの変化が早くなってきている」と緊張感が走った。
退場者がいれば、新人もいる。カラフルなグラビアなどの高級感が売りの「スターサッカー」(楽天)や「フットボールライフ」(ギャガ・クロスメディア・マーケティング)、解説性の高い「ジュニオール」(同)が今春、相次いで創刊された。
「ライフ」と「ジュニオール」両誌の中山淳編集長は「生き残れるのは、いろんな意味でサッカー業界をひっぱていく力がある雑誌」と自信をのぞかせている。
ただ、人気の高い「日本代表」に左右される雑誌が多いのも事実で、別の専門誌の編集長は「監督がジーコからオシムに代わり、新しいチームや選手をどう扱っていくのかが勝負になる。新たな読者の関心をいかに呼び起こすか、その才覚が求められる」と話している。