葬儀はコンビニで申し込み、火葬は洋上の「斎場船」で−。宗教法人専門の経営コンサルタント会社が、日本人の葬儀・埋葬の将来像についてこんな予測をまとめた。葬儀や埋葬をめぐる多くの近未来像が盛り込まれているが、中には既に葬祭業者らが実用化に向け動き出している“プラン”も。日本人の死生観の変化が読み取れる将来像の予測となっている。
予測をまとめたのは、宗教法人を対象にしたコンサルティングサービス会社「日本テンプルヴァン」(JT−VAN、井上文夫社長)。
将来の葬儀や仏事をめぐる市場動向を調査し、蓄積したデータと具体的事例に基づいて「少子高齢化社会から予想した50年先の葬儀」にまとめた。
予測の中で最も早く広まりそうなのが、「コンビニでの葬儀申し込みサービス」だという。
井上社長によれば、病院で親族を亡くすと、現在は病院から紹介された出入りの葬儀業者に依頼するケースが大部分。現状では遺族側は葬儀の価格やサービスを比較することができないが、コンビニならば末端操作で金額やサービスを複数から選択することが可能。「消費者側の視点に立ったシステムで、全国展開のコンビニが導入する方針です」という。
一方、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の年間死亡者数は平成50年には170万人のピークを迎えるが、この結果、火葬場の新設が追いつかない問題が起きるという。
現在、一般的には火葬場の実働時間は午前10時ごろから午後3時ごろまで。火葬場は不足しており、冷蔵設備つきの遺体安置室を備える斎場も増加。中には火葬を1週間も待たされる遺族がいるのが現状という。しかし、まとまった広さの敷地の確保が難しいうえ、周辺住民の反対が根強いため、火葬場の新規建設が追いつかない状況になっている。
これを解消するために同社が研究しているのが、「葬儀会館」と「火葬場」の機能を備えた船舶を建造し、洋上で火葬とお清めができる「斎場船構想」だという。既に一部の葬儀業者らと検討し、構想の具体化を図っているといい、井上社長は「法律上の制限や問題点を慎重に検討中だが、いまのところ大きな問題点はなく、実用に向けた研究を継続したい」と話している。
さらに井上社長は、「家族、近親者だけで執り行う密葬や家族葬が急速に普及している日本では、数年後には会葬者数の平均は70人程度になる」と指摘。戒名(法号)も不要だと考える人や無宗教葬儀を希望する人が増加。仏式葬儀は10年以内に60%を割り込むとみており、日本人の葬儀についての考え方や死生観が急速に変化していることを浮き彫りにする調査結果となっている。