家庭の中で最も多く水を使うのは、トイレ。その洗浄水量が今や、超節水時代を迎えている。水量を従来の半分以下という6リットルに抑えた商品が今年、相次いで発売されている。最新のトイレは、従来型に比べ水道代が年間約1万2000円お得になるという。トイレの水量は、この約40年で3分の1以下と大幅に減っている。
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デザイン性の向上とともに節水能力が高まっているトイレ(写真はTOTOの新型)=東京・新宿のTOTOスーパースペース(山田俊介) |
まだ多い旧型
TOTOが10日に発売した、1回当たり洗浄水量6リットル(小便時4.5リットルと5リットル)型は、新型「ネオレスト」。同社の試算では、6リットル型は13リットル型に比べ、4人家族なら1年間で浴槽約258杯分の節水が可能。また、節電効果も高めたことにより、水道代と電気代を合わせると年間約1万7000円の光熱費の節約ができるとしている。
同社の試算によると、新築住宅のトイレの改装は41年に1回が標準サイクルで、浴室の22年、台所の26年と比べ極端に長い。このため、これまでの主力機種は8リットル型だが、住宅に現在、設置されているトイレの大半は、昭和50年代〜平成初期に主流だった13リットル型だという。
6リットル型はすでに海外で販売されていたが、「菜食の多い日本人は欧米人と比べ便の量が多く、質も異なる」(同社)と日本人向けに改良。8リットル型と遜色(そんしょく)ない排出性能を保つため、便器の内側と排水経路の形状に工夫を施し、吸引力を強化することにより、国内向けの6リットル型を実現させた。
レストルーム事業部の青木香奈枝さんは「『従来の13リットル型がまだ使える』という層に対し、節水などによる家計の節約メリットは、買い替えを促す効果が見込める」と話す。
CO2も削減
TOTOに先駆けて4月、6リットル(小便時5リットル)型「ECO6(エコシックス)」を発売したのが、INAX。タンク内の水位を高くして落差によって水の勢いを高め、一気に押し流す。さらに、流れる水で便器の内側全体を洗える工夫が施されている。
同社によると、2日で浴槽1杯分以上、年間で4万5260リットルの節水効果が得られる。また、処理時の二酸化炭素(CO2)の排出量に換算すると、年間約27キロの削減効果があるという。家計の節約に加え、「地球温暖化防止にも貢献するトイレ」という点も売り物だ。
家庭で使われる水量の約4分の1はトイレといわれる。それだけに、節水性能は掃除のしやすさとともに、消費者にとって購買理由の1つとなり得る。40年代には20リットル型が主力だったトイレ。最近はデザイン性の向上に目が奪われがちだが、基本性能である洗浄水の少量化が今後、ますます進みそうだ。
「節水」多くの誤解
節水は、家計に直結する。とはいえ、ことトイレの節水となると、その知識は意外にあやふやなようだ。
INAXが5月に行った「家庭の節水に関する調査」によると、「家庭の中で水を一番多く使うと思うのは」との問いに対し、過半数の54.8%が「風呂」と回答。次いで「洗濯」「炊事」となり、「トイレ」は4番目で12.6%だった。
しかし、東京都水道局の平成14年度調べでは、トイレで使う水の量が最も多く、約28%を占める。INAXでは「節水をめぐって、実態と意識が乖離(かいり)していることが浮き彫りになった」と分析している。
INAXの調査ではまた、トイレ1回当たりに流れる水量について、「分からない」が18.3%で最多。さらに、トイレに節水効果が「ある」と答えた人は過半数だったものの、「分からない」も43.6%を占め、トイレの節水効果は実感しにくいようだ。
一方、TOTOの「エコアイデアコンテスト」(12年実施)に寄せられた水回りの節水方法の12%は、「間違ったアイデア」。このうち6割以上は、「トイレのタンク内にペットボトルを入れて無理に水量を少なくする」という“誤解”だった。また、「常に小便のレバーで流す」や「小便は毎回流さない」といったものも。
TOTOでは「便器の内部や配管に汚物が詰まっている場合もある。水量を無理に少なくするなど誤った使い方は、故障や、たまった尿石による汚れや臭気などの原因にもなる」と注意を呼びかけている。