新たな料金も…サービス課題
NTTドコモ、KDDI(au、ツーカー)、ソフトバンク傘下のボーダフォンの国内携帯電話3社は9日、電話番号を変更せずに契約する携帯会社を変更できる「番号ポータビリティー」(番号継続制度)を10月24日に開始すると正式発表した。顧客の流動性が高まるのは確実で、新規獲得やつなぎ止めに向けた料金やサービス競争が本格化する。
これに伴い、KDDIは同日、顧客が他社に移転する場合にKDDIに払う移転手数料を2100円に設定した。
一方、9月1日からは、他社からKDDIに移転する利用者向けに仮予約サービスを開始。auに新規加入した場合、端末購入などに使える2000円分のポイントをプレゼントする。他社も今後、各種キャンペーンを展開する予定で、前哨戦が白熱してきた。
携帯電話の番号ポータビリティーを待ち望んでいた人も多いはず。民間調査会社の利用動向調査では「全体の1〜2割が利用する」との見方も出ている。だが、番号以外は継続できないサービスが多いことは意外に知られていない。
携帯会社を変更したい利用者はまず、現在契約している携帯会社に電話かインターネット、受付店で予約申し込みをする。その上で予約番号を受け取り、新しい携帯会社に出向いて手続きをする仕組みだ。「予約申し込みにかかる時間が約15分、新規契約にかかる時間が約30分」(携帯会社)で時間の制約や手間も少なく、利用促進につながりそうだ。
ただ、料金負担も新たに発生する。解約手続きに伴う移転手数料が2100円(KDDIの場合)かかるほか、年間契約者の場合は、さらに数1000円程度の途中解約の違約金も加わるので注意がいる。また、新規契約会社には、通常手続きと同様に約3000円の新規加入料と携帯端末代も必要だ。
一方、最大の盲点は携帯番号以外はほとんど引き継げないことだ。
特に利用者の不満が噴出しそうなのが、携帯電話にダウンロードした多種多様なコンテンツ(情報の内容)の扱い。「着うた」などの楽曲をはじめ、電子書籍やゲームなど著作権保護の強い有料コンテンツは、携帯機種を特定して配信されるため、継続は不可能だ。
auが平成16年11月に開始した、1曲丸ごと取り込める「着うたフル」は、1曲約315円だが、若年層を中心に累計6000万曲超も販売されている。携帯電話に数十曲を保存する人も多いが、携帯会社変更で、過去に購入した楽曲が無駄になる可能性もある。
長期契約者も注意が必要だ。移転先では、機種変更などに使えるポイントや長期利用割引が引き継げない可能性が高い。各社とも新規獲得のためにキャンペーン展開する可能性もあるが、収益に直結するだけに「基本的に長期割引の引き継ぎはあり得ない」(KDDIの小野寺正社長)と慎重だ。
また、アドレス帳は引き継げるが、自分のメールアドレスや過去に送受信したメール内容は引き継げず、利用者によっては影響も大きい。
野村総合研究所の北俊一上級コンサルタントは、「小手先の競争ではなく、サービスやビジネスモデルで勝負するべきだ」と指摘するが、その前に、利用者の視点に立った説明責任も求められている。