「10年以上」成分調査義務付け 環境省
温泉に「更新制」が導入されそうだ。現行の温泉法では、1度成分分析して「温泉」となればよかったが、10年以上経過している施設も少なくなく、成分が変化している可能性があるためだ。環境省は法改正を検討し、定期的な分析を盛り込む方針。ただ、温泉でなくなった施設の営業をどうするかといった課題も山積している。
温泉法では、温泉とは25度以上か、規定成分が一定量以上含まれると定義されているが、成分分析は温泉施設を始めるとき、源泉で1回行うことが義務づけられているだけ。環境省は「10年ごとの見直しが妥当」との通知は出しているが、強制力はない。
このため、再分析していない温泉が多く、平成16年に環境省が実施した調査では、掲示してある成分分析日からの期間は5年未満が42%あるものの、10年以上20年未満が21%、20年以上も15%と全体の3分の1以上が10年以上経過していた。
有名温泉地を多く抱える静岡県は、定期分析の義務化を環境省に要望してきた。県健康福祉部は「根拠が国の通知だけでは再分析の強い指導ができず、利用者に正しい情報が伝えられない恐れがある」と話す。
同省は今年6月、有識者による懇談会を設置し、定期的な成分分析を義務づける方向で検討を進めている。中央温泉研究所の甘露寺泰雄所長は、20年以上経過した成分分析表は掲示しないというドイツの例を参考に、「再分析の期間は10年程度が適当」という。
ここで問題になるのが、再分析で「温泉」でなくなった場合だ。温泉でなくなったのに温泉と表示すれば、公正取引委員会の景品表示法に抵触する可能性がある。長年「温泉」を売りに営業してきた施設にとって影響は大きい。
どのくらいの施設が温泉でなくなるかは「不明」(環境省)。懇談会では「温泉以外の魅力で売っていくしかない」という声がある一方で、「そう簡単にはいかない」という指摘も。
また、源泉と浴槽のどちらで成分分析するかも問題もある。源泉から浴槽まで引く間に湯の成分が変化するケースもある。ただ、浴槽で分析すると数が膨大で、分析が追いつかない恐れがある。
環境省では課題の検討を続け、今年中をめどに結論を出す予定だ。
温泉をめぐっては、16年に発覚した長野県の白骨温泉の入浴剤混入問題を契機に省令が改正され、加水や加温、入浴剤混入の有無などを表示する義務が新たに科されている。