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貸し手は郊外、海外へ
“団塊住宅”も世代交代 子育てファミリー向けに賃貸や販売
8月9日(水) 東京朝刊 by 津川綾子
広々とした戸建て住宅に子育てを終えた中高年夫婦が暮らし、子供を抱える若い夫婦が狭いマンションに暮らす−。そんな住空間のミスマッチを解消しようと、世代間で住宅を“バトンタッチ”する動きが広がっている。ゆったりとした老後の生活を求めてリゾート地に転居したり、郊外を離れて買い物や交通の利便性が高い中心市街地に移り住んだりする団塊世代やシニア層から、住まいを借り受けたり買い取ったりして、若い世代が暮らすという試みだ。

「ア・ラ・イエ」が販売する古い住宅の改装前

契約は3年単位
今年4月、国土交通省の支援で設立された非営利法人の有限責任中間法人「移住・住みかえ支援機構」は、子供から手が離れた50代以上の世帯からマイホームを借り上げ、その住宅を子育て真っ最中の若い世代に転貸することを目的としている。現在、住宅関連などの民間企業から協賛を募っており、10月には体制が整い、実際に子育て世帯への貸し出しを開始する予定だ。

住宅の貸し手として同機構が想定しているのは、主に定年前後の中高年層。代表理事で立命館大学の大垣尚司教授(金融法)は「約270万人いる関東近辺の団塊世代が、人生の3分の1にあたる定年後の生活を活動的に送ることができるよう、住宅を有効活用してもらうための仲介役です」と話す。

家賃は、若いファミリーが借りやすいよう安く設定。また、貸し手が万が一、マイホームに戻りたくなった場合も考慮し、賃貸の更新期間は3年単位とする計画だ。

大垣教授は「(中高年層は)マイホームを手放さずに『年金化』することが可能となるため、定年退職を機に国内外の保養地に移住したり、利便性を考えて郊外の戸建てから駅前や都心のマンションに住み替えたりするなど選択の幅が広がる」と話す。

1千万円安く
東急電鉄は昨年4月、沿線にある築後10年以上、敷地面積165平方メートル以上の戸建て住宅を買い取り、耐震補強や内装、間取りの大規模な改修を行って販売する、住み替え促進事業「ア・ラ・イエ」を始めた。

住宅事業部課長補佐の呉東建(おう・どんごん)さんは「売り手の半数は定年退職前後の夫婦で、軽井沢や伊豆、オーストラリアに転居するなど行動的な方が多い。一方で、購入したのは幼児や小学生などの子供がいる40代前半のファミリー層」と話す。

改装例としては、築後23年の純和風住宅を外装は現代風に、台所と隣り合う和室を床暖房の広いリビングに改装し、対面型キッチンに変えた。改装後の販売価格は、同様のレベルの新築住宅に比べ500〜1000万円ほど安いという。今年度の事業数は、昨年度の約2倍を見込んでいる。

高齢所帯、持て余す「広さ」
総務省の住宅・土地統計調査(平成15年)などによると、持ち家では、4人以上の家族の29%が100平方メートル未満の住宅に住み、65歳以上の単身または夫婦の住宅は54%が100平方メートル以上ある。

東急電鉄住宅事業部の呉さんは「高齢世帯の広い住宅では2階が物置になっていたり、使っていない部屋の掃除や、庭の手入れをこまめにする必要があったりと、手間がかかる。高齢世帯のライフスタイルには合わず、暮らしやすくはない状態」と話す。

借り手となる若い世代は、どうか。国土交通省の15年住宅需要実態調査によると、17歳以下の子供を育てる世帯が住まいで重視する点でトップとなったのは、「住宅の広さや間取り」。広い住宅に住みたいという希望は、やはり強い。

中古住宅に対するイメージについて、リクルート住宅総合研究所主任研究員の島原万丈さんは「確かなデータはないが、リノベーション(できる限り既存の建築を生かしながら改修や増築を行うこと)人気もあり、30代前後の若い世代には中古だからダメだという意識はない」と話している。

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