ホテルでの結婚式が主流の関西地方で、西洋風の邸宅で式を挙げるウエディングハウスの出店ラッシュが続いている。昨年、利用者が前年比約3倍と全国で最も高い伸び率となるなど、急速に需要が拡大していることが原因。大阪市内だけで来春までに4カ所オープンする。「東京では土地確保が難しく、市場も飽和気味。今は関西が主戦場になっている」(関東の業者)という。
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大阪市内で建設中のウエディングハウス=大阪市浪速区 |
イギリスの教会で100年以上使われたステンドグラスで囲まれたチャペル。御堂筋を見下ろす屋上庭園でフラワーシャワーを…。大阪・本町のビジネス街に来年2月開業するウエディングハウスの宣伝文句だ。
今年3月に閉店した高級レストランを改装。チャペルがそびえる5階建ての建物で、100人収容の宴会場を2つ備える。運営するのは神奈川県内でブライダル、ホテル事業を展開するクリスタルホテル(藤沢市)。県外初出店となる。
「関西でウエディングハウスの進出が本格化したのはここ2〜3年。まだ珍しさがある」と吉田一臣支配人は話す。大阪府堺市にも出店する予定だ。「東京都心は土地確保が難しい。結婚産業が盛んな名古屋も市場は飽和気味」という。
結婚情報誌『ゼクシィ』(リクルート発行)調査によると、関西での結婚式、披露宴はホテル利用が最も多く、60%を占めた年もある。2割程度の名古屋と比べると際だっているが、ここ数年変化が表れている。
大阪市にウエディングハウスが初めてオープンしたとされる平成15年以降のデータをみると、ハウスを利用した結婚式の割合が着実に増加。昨年は前年比約3倍の15・3%となり、先行する首都圏、東海を初めて抑え、全国で最も高かった。ホテルは42・4%と首位を維持しているものの減少傾向にある。
ハウスブームの火付け役となったテイクアンドギヴ・ニーズ(東京)は、昨年度以降に全国で開業した29店のうち約3分の1を関西に振り分けた。「進出業者はまだ少なかったので、スピードアップした」と話す。
大阪府下には現在16のハウスがあるが、9月にベストブライダル(東京)とタガヤ(京都)がいずれも大阪・心斎橋で、10月にもラヴィス(東京)が大阪・湊町で開業するなど出店ラッシュは続く。関西ゼクシィの藤原淳編集長は「ホテルはパッケージ型のプランが多い。最近はハウスのようなオリジナルな演出を求めるカップルが強く、シェアが変わる可能性がある」と指摘する。費用は約300万円とホテルより高めだ。
ホテル側も対抗措置を強めている。ハイアット・リージェンシー・オーサカ(住之江区)は今年4月、有名デザイナーに発注してチャペルを新設した。「ハウスに対抗するため、オリジナリティーを出す」と力を込める。ある老舗ホテルは「ハウスのイメージ戦略にやられた。ホテルの方が幅広く対応できることを知ってもらう」とし今月からPRを強化する。
3兆円産業といわれるブライダル業界だが、晩婚化・少子化で市場の縮小は避けられない。
日本ブライダル事業振興協会は「パイは大きくならないのに会場ばかり増えている。関西でもいずれ飽和状態になる」と予測。藤原編集長も「あと5年で勝ち負けがはっきりするだろう。ハウスもホテル並みに一般化してきたら、飽きられてくる。独自性が生き残りのカギ」と話している。