個性派俳優、柄本明率いる劇団東京乾電池が創立30周年を迎えた。今春の記念公演を収録したDVDが発売されるほか、2日からは東京乾電池祭り第2弾として新作公演がスタートする。創立メンバーのひとり、ベンガルは「30年の節目として記念のものができたので、(DVDは)書庫の端っこにでも置いていただければ」と話している。
東京乾電池は昭和51年、劇団自由劇場出身の柄本、ベンガル、綾田俊樹を中心に結成された。「等身大の芝居、身近に分かるもの、狭いアパートでの貧乏生活から発想する、根が暗いようなばかばかしい芝居をやりたかった」とベンガル。
3人で初めて立ったステージは、東京・新宿のビアガーデンでのコントショー。「トリオの名前があった方がいい。東京乾電池ってどお?」という雇い主の提案がそのまま決まった。
「名前なんてどうでもいいやと思っていましたからね。『あ、それでいいですよ』と」
ギャラはウケた場合は4500円。ウケない時は1500円だった。
「(ショーは)ウケない方が多かった。酔っぱらっている客がステージなんて見ないもの。だから登場するときの音楽で驚かせたり、奇抜なところから登場したり、体を使ったコントをがむしゃらにやりました。勉強になりましたね」
やがて高田純次、岩松了、角替和枝らメンバーが増え、個性派人気劇団として急成長。公演する劇場もどんどん大きくなっていった。即興的なドタバタ芝居、シュールな笑いの喜劇に始まり、岩松脚本作品の上演や柄本演出でシェークスピアやチェーホフなどの古典劇上演など、レパートリーを広げてきた。
劇団初のDVDとなる「劇団東京乾電池 創立30周年記念公演 DVD BOX」(ポニーキャニオン、18日発売)は、今年4月の創立30周年記念公演から「夏の夜の夢」「長屋紳士録」などを収録。特典ディスクには、劇団員へのインタビューや、舞台後の打ち上げのようすなど多彩な映像が収録されている。
「いい30年でした。成長していないけど、解散の危機もなく、やってこられたのが幸せ。ぼくらは365日、芝居のことばかり。たぶん、死ぬまで舞台に立っていると思う。DVDをきっかけに生の舞台にも足を運んでいただければ。生の舞台は見始めたらクセになりますよ」