木住野佳子　インタビュー

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ジャズピアニスト、木住野佳子(きしの・よしこ)が、デビューからちょうど10年を迎えた。これを記念して「ハートスケイプ」「タイムスケイプ」という2作の新譜を23日、同時発売。2枚を聴けば優しく柔らかいタッチのピアノ演奏、そして音楽作りを一貫して目指してきた木住野の今現在の全貌が分かる。次の10年を目指す木住野に話を聞いた。

text & photo by ENAK編集長

あっという間の10年
「10年ってあっという間でしたよ」

3年ぶりに会った木住野は、笑いながら振り返る。ENAK登場は14年9月にアルバム「シエスタ－Siesta－」を出したとき以来だが、産経新聞(紙面)で平成7年のデビュー直前にインタビューをし、記事を書いていたから、この「10年」があっという間のものだった点は、そのとおりだなと思う。思うのだが、漫然と時を追い過ごした当方と年1枚ペースでアルバムを出し続けた彼女とでは、10年の質は当然異なるだろうと思うのだ。

木住野佳子

「年に1枚アルバムを作る。さらにその間に作編曲をし、コンサートを開く。そういう一定のペースができあがっていましたから、特段忙しいと感じることもなかったですね。ともかく自分の音楽を作ることにだけ意識を向けて、最近はストリングスアレンジまで始めて…と、さまざまなことに挑戦しながら音楽を作ってきた10年だった、といえるでしょうね」

ストリングスアレンジも始めた、というのは、昨年3月に出したアルバム「Praha」で、弦楽隊の編曲を手がけたことを指す。その後、弦楽団を従えたコンサートも開き、そのころ「ハートスケイプ」の構想ができたという。

「ハートスケープ」は収録の10曲すべてを自作曲で固めた。さらに弦楽団も参加して「Praha」の延長船上にるのにふさわしい作りになっている。だが、それだけにとどまらず尺八の片山瞠山、二胡の篠崎正嗣という客演も得てより多彩な音楽を展開している。

片山とは昨年11月に富山で開いたコンサートで共演した。このコンサートでは胡弓奏者とも一緒に演奏。「ハートスケープ」への尺八、二胡の参加は、そのときに吸収したものをさらに発展させたものだ。たえずさまざまなものを吸収し、それを咀嚼(そしゃく)して、自分のものとして取り込んでいることがうかがえる。

日本のよさを表現したい
こんなことも言う。

「最近は演奏するほどに日本人として日本人のよさを表現したいなと思うようになっています。たとえば米国のブルースを演奏するより、童謡を演奏するほうが、私にはしっくりくるようになったんです」

木住野佳子

黒人奴隷の労働歌から派生したブルースは、米国のジャズにとっては基礎をなす重要な音楽だ。しかし、木住野は米国人ならぬ自分の音楽の基礎は童謡のほうにあるのではないか、というのである。

「日本の良さを音楽で表現できるようにれば、いいな」

次の10年を占うヒントは、そのあたりにあるのかもしれない。

「ハートスケープ」と同時に「タイムスケープ」という作品も発売。こちらは、ピアノトリオで、ボサノバ曲やビートルズの「カム・トゥギャザー」などを演奏している。

「『タイムスケープ』のほうは、時の情景とでもいいましょうか、今までの私の集大成といっていいかもしれません」

2作を聴くことで、過去から現在の木住野が理解でき、さらに未来の片鱗もうかがえるというわけだ。

「10年を振り返れば、思い通りに進まないことがらも多々ありましたが、総じてやりたいことをやりたいようにやらせていただけたなと思っています。常に自作曲を発表し続けられましたしね。私はあまり器用じゃない。それが幸いしたのかもしれません。器用じゃないからやりたいこともはっきりして、音楽について悩むこともなかったですから」

あっという間の10年。きっと次の10年はもっと早く過ぎていくはずですよ、といったら、いや～な顔をされた。それとはともかく、殺伐とするばかりの日本で、「優しさ」を主軸にした木住野の音楽が、この先の10年に果たす役割はきっと大きなものになるはずなのだ。

information

ハートスケイプ
ユニバーサル　ミュージック
UCCJ-2035
￥3,000(税込)

1.Sketch Of Praha
2.砂時計
3.風に抱かれて
4.静香風
5.Con Passione
6.Ancient Dream
7.風の情景
8.月の踊り
9.The Good Old Time
10.A Song For My Friend

タイムスケイプ
ユニバーサル　ミュージック
UCCJ-2034
￥3,000(税込)

1.Wave
2.Come Together
3.All Of You
4.No More Blues
5.A Child Is Born
6.Wives & Lovers
7.For All We Know
8.Spring Is Here
9.When The Saints Go Marching In
10.My Foolish Heart

◆10th Anniversary Tour 2005

4/25(月)　名古屋ブルーノート
5/4(水)　福岡ブルーノート
5/5(木)　大阪ブルーノート
5/10(火)　東京・STB139スイートベイジル
※スイートベイジル以外はピアノトリオで出演。スイートベイジルではストリングスなどと共演予定。

◆公式サイト

http://www.kishino.net/

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